Disc-Review


これはあくまでも私の個人的な感想なので、あんまり役に立たないかも知れません。しかも作者
は文才というものに事欠く始末です。まあこいつはこんな風に思ってんだな、位に見ておいてくだ
さい。少しづつ更新はしております。
そもそもDisc Reviewというのは、作者の個性というか、感性が顕著に現れるものなので、あまりそういう
ものを前面に押し出すのは、エゴイスティックな気がして、私としては自分のSiteはできるだけ客観的に
作っていきたいという意向がある為、何となく抵抗を感じる訳です。なので、あまり気が進まないというの
もあります。(→殆ど言い訳ですが)

<Singles>

Shantell(Future 9)released 1983

And Also The Treesの記念すべきDebut Single. 7"のみのリリース。この曲は、Simonが墓地を散歩してい
た時に、ふと目にとまった真新しい幼い少女の墓前に供えられていたCardにInspireされて作ったものだ
そうだ。その日はとても心地よい夏の日だったそうで、それを見ることができない彼女を哀れに思ったが
、とその瞬間、墓の回りの木々が溜息をつくが如くさざめいたそうだ。その時彼は彼女の存在を感じたそ
うだ。全然レビューになっていないが、スローテンポ゚の、歌詞が素晴らしい曲。DemoではJustinが一人で
歌っているものもあったが、それはそれでまた雰囲気が違っていて楽しめた。リリースされた曲でもBack
 Vo.で歌っている。B面の'Wallpaper Dying'はThe Cureの影響が多分にうかがえる曲。



The Secret Sea(7": RE 3, 12": 12 RE 6)released 1984
<7" Sleeve><12" Sleeve>
7"のB面の'Secrecy'は7"のみの収録だが、早い話、'Secret Sea'のInstrumental Dub Versionといったところ
である。'The Secret Sea'は日本盤1st. Album(LP)及び仏盤'et aussi les arbres'(LP), 'From Horizon To
Horizon'(CD)に収録されている。12"の'The Secret Sea'はExtend Version. 中間にドラムソロが入っている
が、正直言って、このExtend Versionはやらなくてもよかったんじゃないか、と思う。B面には'84年3月
30日にStafford Collegeで収録されたLive3曲が入っている。Liveはなかなか上出来である。



A Room Lives In Lucy(12 RE 8)released 1986

12"のみのリリース。AATTの初期を代表する曲と言ってもいいだろう。にも関わらずA、B面の曲ともに、
Albumに収録されなかったのが不思議である。 この曲が作られる直前、Simonはバンドでやるべき事は
やり尽くしたと感じ、バンドの解散を考えていたそうである。そんな折にブリストルに住む少女から25ペー
ジもの手紙がSimonに送られてきて、そこにはどれだけ彼らの音楽が彼女の人生において重要な部分
を占めているかが綴られていたそうである。彼女にとって、事物は彼女の心の傷となるものであった。ま
た彼女はイエス・キリストについても多く言及していたという。この曲は彼女の手紙にInspireされて作ら
れた作品。初期の作品の中でも特筆すべき傑作ともいえる。B面の'There Was A Man of Double Deed'
は韻を踏んだ、Jones兄弟が祖母から聞かされていた話がもととなっている。'Scarlet Arch'は名曲!!



The Critical Distance(12 RE 12)released 1987

12"のみのリリース。この曲もAlbum未収録。タイトルが示すとおり、ごく内省的で、重々しい印象を受ける
Single.B面の'The Renegade'はCamusの同名小説の一文からの引用である。とても激しく、重々しい曲調
は、ややすると芝居がかってみえるのかも知れないが、前にも書いたように、Lyricの情景を聴く者に想
起させるに充分な説得力をもって、訴えかけるその力強さには圧倒されるばかりである。(Inesさんのご
好意により)LyricをLyric pageにUpしたので、参照して頂きたい。



Shaletown(RE 13/12 RE 13)released 1987

'The Millpond Years'からのSingle.B面の曲も'The Millpond Years'に収録されている。'Critcal Distance'ほ
どではないにしろ、やはり曲調には重々しさが感じられる。いや、むしろ重厚なsoundと言うべきか。B面
の'Needle Street'は、'Shaletown'のArrange版インスト。これもまた美しい。全体的にとても聴きやすくなっ
ているし、ドラマティックな展開を見せる曲調は、AATTでなければ醸し出すことのできない、彼等のオリ
ジナリティそのものであろう。もともとの旋律の美しさからいって、何で英国で受けなかったのが、理解に
苦しむが、自己の内面、もしくは英国のもつある種の陰鬱さに深く根ざすその内容と、否が応にも向き合
わざるを得ないようなLyricの数々が、英国のみならず、音楽を単なるEntertainmentとして捉える人々に
とっては、受け入れ難いものなのかも知れない。



The House of the Heart(RE 14/12 RE 14)released 1988
<7" Sleeve><12" Sleeve><CD sinlge Sleeve>
この曲がBestだという人も多いと思う。ViolinやTrumpetをfeatureしたSoundは透明感と奥行きを感じさせ
る。 彼らの作る曲の素晴らしい点は、Lyricsから想起される、その幻想に満ち溢れた情景にあると改め
て思わせる。また、Eugene Atgetの作品を彷彿とさせるcoverもまた秀逸である。
B面の曲では、やはり'Anchor Yard'だろう。一言で言ってしまえば、鯖の腹裂き唄なのだが、スローテン
ポながら、震えるようなGuitarの旋律と、語り部のようなSimonのVo.が絶妙のハーモニーを見せる曲であ
る。'Count Jefferey'はAATTの持ち味が最大限に引き出された曲。ただ、聴くタイミングを間違えるとうな
されてしまうかも知れないが。



Lady D'Arbanville(RE 15/12 RE 15/CD RE 15)released 1989

Cat Stevensのoriginalはミドルテンポの仄かに哀愁漂う曲だが、AATTのこのcoverは重厚で悲壮感に満
ち溢れた曲となっている。Simonの切々と歌い上げるVo.がそれとmatchして、見事にAATTのsoundとして
染め上げてしまう所は見事である。とは言え、B面のoriginal曲を聴くと、やはり本質的な違いを感じてし
まう。'The Harp'は映画のSoundtrackに影響を受けたと思われるインストであるが、これにVo.が加わると
どんな感じになるのだろう、と想像力をかき立てられる。'The Street Organ'は'Farewell To The Shade'にも
収録されている名曲。また、同タイトル曲のプロモビデオが"Live 89-98"のVideoにも収録されているので
、ご覧頂きたい。



Misfortunes(RE 16)released 1989

7"のみのリリース。この曲もとても気に入っている。IntroのGuitarの美しさは、格別のものがある。'The
House of the Heart'も大分聴きやすくなった印象を受けたが、この'Misfortunes'もそうした意味では、とて
も聴きやすくなっている。個人的には、このタイトル曲に仄かに漂う悲壮感とメランコリックな一面を覗か
せるその曲調に心を動かされる。A、B面ともに'Farewell To The shade'に収録されている。



The Pear Tree(Troy 003S)released 1989

12"のみのリリース。タイトル曲をThe CureのRobert Smithがproduceしているが、この時点ではAATTも独
自のオリジナリティを確立しているせいか、The Cureに染められてしまっている、という印象はない。'The
Pear Tree'は'From Horizon To Horizon', 'Farewell To The Shade'(Troy Label :Round Mix)にも同曲が収録
されているが、この12"versionはそれらとはまた違ったRemix.(Sweet Re-Mix)中でもpianoの美しさが一番
際立つMixじゃないかと思う。ちなみにKeyboardはMark Tibenhamである。B面はすべてLive.割と、静か
な曲調である。



Nailed(AATT CD 1:self-released)released 1998

'Nailed'を含む、全7曲収録のCD-Single、というよりはMini-Albumといった感がある。Album未収録の'The
Great Alone'はJazz色の強い曲。'Highway 4287'はIntroがえらく長いが、なかなかcoolなarrangeである。
'The Obvious'はLyricを読むと、短編小説の一部のような印象を受ける。やっぱりSimonは文学青年だな
、と思ってしまう。Live2曲の音質はかなり良い。こちらに収録されている、'Ill Omen'はこれまでのものと
は違うArrange。こちらのタイトル曲も前述の'Lady D'Arbanville'同様、'Live 89-98'Videoにプロモビデオが
収録されている。



<Album>

And Also The Trees

The CureのLaurence Tolhurstによるプロデュース。不可避的にThe Cureを思わせる部分があちこちに見
られる。'Think About AATT'にも書いたが、The Cureよりはむしろstoicな印象を与える。Tolhurstの
produceのお陰で確かに耳当たりは良いのだが、あまりにもきれいに収まりすぎている印象はある。2nd
を聴いてから、1st.を聴くとわかるのだが、大分AATTとしてのカラーを抑えている感がある。また、'So
This Is Silence'と'The Tease The Tear'が同じようなarrangeで、曲調も似てしまっているのが、とても気に
なる。個人的には'Shrine'が好きだ。



Virus Meadow(Lex 6)released 1986

self-produced.The Cureを引き合いに出されるのに、うんざりしたからなのか、この作品から自分達で
produceするようになった。そういう意味では、AATTの本領を発揮する事ができたのは、このAlbumから
だろう。1st.Albumよりやや重みを増したsoundで、より内省的になっている。Simonの歌詞にも自ら作り上
げた詩世界への深い探求と心霊的なものを暗喩する表現が顕著に表れている。或る意味この作品こそ
が彼等のルーツと言ってもいいのではないだろうか。Lyricsといい、彼らのHometownにまつわる逸話や
情景を感じさせる内容となっている。'Critical Distance'の所でも書いたように、Simonの書くLyricには我々
聴く者のImaginationを大いにかき立てる不思議な魅力があると思う。とは言え、そうしたLyricの世界を
今ひとつ実感できないという人にはAATTのSoundの何が魅力なのか想像もつかないのかも知れない。



The Millpond Years(Lex 9)released 1988

AATTのロマンシズムがますます円熟味を増した作品。2nd Albumよりはやや軽くなり、聴きやすくなった
ような印象を与える。この3rd. Albumでは、様々な楽器を取り入れることを試みている。(例えば、ハープ
シコードや尺八など)'Simple Tom and the Ghost〜'はこの作品を象徴すると思わせるほどの出来ばえで
あり、本当に名曲である。全体にClassicの影響を強く感じさせる。ただ惜しむらくは、後半はそれぞれ曲
はとてもいい曲なのだが、曲のイメージがやや統一性を欠いた感がある。



Farewell To The Shade(Lex 10)released 1989

全体的によくまとまっていて、構成は申し分ない。このAlbumも評判のよい作品である。
正直、'Ill Omen'のドラマティックな展開を見せる曲調には、圧倒された。しばらく頭から離れなかったくら
いである。どこかのInterveiwで、'Misfortunes'は当初もっと重い感じの曲だったらしい、と書いてあったが
、'Lady D'Arbanville'の後でさらに重い曲はちょっとキツいだろう。この位で丁度いいと思う。'Misfortunes'
もさざめくようなGuitarが美しい曲である。全体的に、pianoやviolinが効果的に使われており、bassとの絡
みが絶妙である。



Green Is The Sea(Normal 134 CD)released 1992

Normal移籍後第1弾のAlbum。いきなりのホーンセッションではじまる'Red Valentino'はFarewell To The
Shade路線を期待していたfanが失望しそうな感じではあるが、基本的にはそう変わってはいない。'The
Fruit Room'はAATT本来の美しい曲調を保っているし、'Blind Opera'はあたかも神との対話を思わせる
Lyricsで、Simonの歌い回しが朗読的なものではなく、ちゃんと旋律にのせて歌われているものが多くな
った。また全体的にSimonのVo.の魅力が最大限に引き出された、佳作であると感じさせる。
' Tremendous Risk of Mr. Federico'はAATTの数あるインストの中でも好きな曲である。関係ないが、
'Federico'と聞いて、Federico Garcia Lorcaを思い出してしまった。



Klaxon(Normal 164 CD)released 1993

個人的には、とても好きなAlbum. どちらかというと、SimonのVo.主導のように感じられた前作までとは違
い、instrumentとのバランスが取れてきたように感じる。'Sunrise'はとても美しい曲で、スローテンポの曲
であるが、非常に透明感と奥行きを感じさせ、この曲だけでもこのAlbumを聴くに値すると思うくらいであ
る。また、'Wooden Leg'もかなりの秀作である。特にGuitarのサビの部分は昇天してしまうんではないか
と思うくらい、美しい。但し、'Dutchman'のハモりはうまく調和していない気がする。個人的には後半の曲の
方が好きだ。然し、素朴な疑問として、何故このAlbumだけSleeveが他のものと違ってイラストであり、雰
囲気が違うんだろうか、と思う。蛇足だが、Inner Sleeveの中のpictureで、日も傾き、夕闇迫る逆光の中、
シルエットとして浮かぶメンバーの写真はとても美しいので、これも必見でしょう。



Angelfish(AATT-CD 2)released 1998

いきなり都会的な印象となった作品である。推測だが、この辺りからアメリカ進出を意識したんだろうか
、と思わせるような構成である。当初このAlbumはMezentianからリリース予定(1996)だったが、どうも
Promotionの関係で問題があったらしく、結局はself-release(1998)となった。(詳細はArticleのSideline
No.24を参照してください)'Fighting In A Lighthouse'をはじめ、とてもPopな曲調のものが多くなった。'The
Next Fright To Rome'など、アダルトコンテンポラリー的インストなど新しい試みがなされている。個人的
にはスローテンポの'Sea Chage'が好きである。さて、NYにやってきた文学青年は次にそこに何を見出
すんでしょうか?



Silver Soul(AATT-CD3)released 1998

いきなり、かきむしる様なGuitarで始まる、'Nailed'。'Think About AATT'にも書いたが、はっきり言って、
'Blue Runner'はいらない。一方、'Get Critical'はなかなか格好いい曲である。ところで、この曲、Lyricは
'The Critical Distance'と途中まで同じものである。すなわち、'The Critical Distance'における、新しい解釈
を見出したとみるべきか、もしくはSimonの内なる変化が如実に作品に反映されたと見るべきなのか。
'Angelfish'同様、映画のSoundtrackの影響を強く感じる作品である。然し、初期のSoundにおける、叙情性
をこのAlbumに求めるのは困難である。
できることなら、今までの先入観や既成概念を捨てて、聴いていただきたい。



Further From The Truth(AATT-CD4)

1番目の曲は、AATTはネオ・アコへと転向したのかと思うくらい、涼やかな印象を受ける、前作とは違う
趣で始まる。D-Side MagazineのInterview('Duskyard'HPを参照のこと)にもあるように、今回はKeyboard
の多用を避け、Guitarのアコースティックな響きやBassの響きを大事にしたようである。暗さと重さのない
、"Virus Meadow"といった印象を受ける。聴けば聴くほど味の出てくる作品である。個人的には、ドラマ
ティックな盛り上がりを見せる'The Reply'と'Feeling Fine'が印象に残った。顧みれば、彼らの曲にはFade
Outで終わるものが少ない。この作品に限らないが、それだけ、曲の最初から最後まで、誤魔化しのな
い、気を抜かない作りをしていると思うのだが、どうだろうか?何にせよ、今回のこの作品が前作'Silver
Soul'を凌ぐ、完成度の高い作品であると思うし、もっと多くの人々にAATTの音楽の魅力を知ってもらい
たいと、この作品を聴くにつけ、思う。



<番外編>
G.O.L.(Gods of Luxury) / Sensations of Tone(China WOLCD1065)

申し訳ないことにDub Soundについての知識は皆無に等しいので、あまり偉そうな事は言えないのだが
、AATTのSoundとは全く趣を異にしている。(別バンドだから当然と言えば、当然だが)
G.O.L.(Gods of Luxury)は、Mark Tibenham, Justin Jones, Antonia Reinerの3人からなるバンドで、既に現
在は解散状態である。このアルバムは唯一リリースされたアルバム。
'Soma Holiday'は数多のCompilationにも収録されているが、とてもいい曲なので、一聴をお薦めする。
('One A.D.'などは海外Online Shop等で入手可能。'Soma Holiday'の試聴はこちらから。)'No Bounds'は
言わずと知れた、AATTの'There Were No Bounds'のG.O.L.によるCover。また、"Moments In Love"は
原曲はArt of Noiseによるもの。'Soma Holiday', 'Angelica In Delirium'はCompilation(G.O.L. Discography
を参照)に収録されているものとはVersion違い。Antonia ReinerのVo.は時に硬質な響きをもち、時に作
品に華やかな彩りを与えている。また、JustinのGuitarも、曲に深みと奥行きを与えており、より洗練され
たDub Soundとしての仕上がりを見せている。'Float'は、内省的な趣があって、個人的には好きな曲。
'Moments In Love'はA.Reiner自身による作詞で、リズムボックス打ち込みの典型的な(?)テクノサウンド
。総じて'Soma Holiday', 'No Bounds', 'Angelica In Delirium'(Compilationに収録)以外の曲は、Mark Tiben
-hamのcolourが色濃く反映されたものとなっており、上記の3曲を聴いて頂ければ、大体の雰囲気はわ
かってもらえると思う。勿論、他の曲も含めてDub Soundとしては、最高の傑作であることは間違いない
が。





※総じて、彼等のSoundにおけるLyricにはSimonが文学に親しみ、かつそれを貪欲に吸収していくプロセ
スをその中に見てとることができる。また曲作りに関しても、Justinをはじめ、他のメンバーが様々な音楽
を吸収して、それを己が作品の中に昇華させていく、その結晶を見出すことができるだろう。彼らの音楽
が時とともにその音楽性を変化させていく過程はそのまま、AATTの成長過程であり、飛沫のように浮
かび上がっては消え行く数多のバンドとは一点を画していると言えよう。そして、例え彼らがもはや表現
すべきものがなくなってしまい、その活動を終わらせてしまったとしても、彼等のこれまでの作品は時を
経てもなお、その輝きを未だ放っているであろうし、その軌跡は決して時間の波に押し流されることなく
、その存在価値を私達の脳裏にしっかと刻みつけてくれるであろうと私は信じている。






つくづく(顔が)似てない兄弟である。それはともかく、もう少しpromotionの仕方を真剣に
考えて欲しいと思う今日この頃である。現況では、軽い気持ちで聴こうと思っても、モノを
入手できないでは、新たなリスナーの獲得は難しい。今いるファンにだけ聴いてもらえれば
それでいいのだろうか。いや、それじゃいかんでしょう。


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